首都ブリュッセルは、フランス語とオランダ語のバイリンガル。国内にはその言語境界線を持つ不思議な国家である。原因は歴史を辿らねばならない。
　紀元前、フランス・ベルギーを中心とする西ヨーロッパ（ガリア）にはケルト人が定住しており、ケルト系の言語を使用していた。カエサルのローマ帝国がここを征服し属州にすると、文化は一気にラテン化した。四世紀に所謂「ゲルマン民族の大移動」が起こり、ライン川を越えて西へ侵略した。ゲルマンの一種族であるフランク族が定住したベルギー北西部（フランドル）では言語が取って替わって、後にフラマン語（オランダ語）へ進化したが、ベルギー南部（ワロニー）ではラテン語が排斥されることはなかった。原因は、フランク族がローマ・カトリック教に帰依したことにあるという。ケルト語、俗ラテン語をベースにゲルマン語が加味し、やがて美しく豊饒化したフランス語へと変化していった。首都ブリュッセルは北西部のオランダ語圏に位置するけれども、フランス語の使用人口が多勢を占める。嘗ては、ワロニー人が行政府を牛耳っていたからという。
　気質や体形も違うらしい。北部のフラマン人はゲルマン系の長身で骨太な体格、髪の色は薄く、性格はシャイで寡黙、律儀で勤勉とある。それに比べると南部のワロニー人は、中性的で細め、慌てず急がず楽天的（ラテン的？）。